作家インタビュー「本巣秀一|塊に宿る感覚。自然の景色とともに形を追う」

陶庫創業50周年特別企画展「素材と表現展」の開催に伴い、作家さんの特別インタビュー企画を開催。
作家の作陶に対する想いに迫ります。


本巣秀一|球体に宿る感覚。
自然の景色とともに形を追う

土をどう表現するか。

用途に縛られず、「塊」感のある形に挑む本巣さん。
参考にするのは人の手による器だけではなく、風化した石像や岩肌、益子の空に広がる景色など、自然や日常のなかにある断片です。


直線的なラインを重視してきた作風から一転、今回の「表現展」では塊をテーマに制作。
思い描いた形が乾燥や焼成で変化していく過程すら楽しみながら、「その時のフィーリング」で作品を育てていく姿を伺いました。

SHUICHI MOTOSU
本巣秀一

陶歴

1980年:栃木県宇都宮市に生まれる
1999年:文星芸術大学に入学
2002年:日本伝統工芸展 入選
益子陶芸展 入選
2003年:伝統工芸新作展 入選
2004年:益子陶芸展 入選
2005年:文星芸術大学修士課程 修了
伝統工芸新作展 入選
益子焼の窯元に入る
2015年:栃木県下野市に築窯 独立


ざっくりした表現と球体への惹かれ

陶庫── 今回、陶庫の50周年企画展「表現展」で表現したいと思っていることはなんでしょうか?

本巣さん── そうですね、日頃作陶していて、用途を考えずにざっくりした表現がしたくなる時があるんです。今回は土の塊感を表現しようかなと思っています。

陶庫── 塊ですか。何か意図があるのでしょうか?

本巣さん── 理由があるわけではないんですが、感覚的なゴツゴツした造形に惹かれるんですよね。難しいですが(笑)。

制作に影響する興味や関心

陶庫── 企画展に関係なくてもいいのですが、最近気になっていることはありますか?

本巣さん── 私生活だと政治やコーヒー、あとはカメラなんかが気になっています。あ、あと「人形」というか…ストゥッコと呼ばれる、石灰を原料にした昔の彫刻に興味があります。完全ではなく、年月を経て風化している感じがとてもいいなと。それに似た物を表現したいとも思うんですが、なかなか思うようにはいかないですね。

ストゥッコ / 出典:https://antiquesakura.jp

インスピレーションの源泉

陶庫── 美術的な関心も制作に影響しているんですね。ほかにインスピレーションを受けるものはありますか?

本巣さん── 食器類を作るときは、他の方が作った食器や、企業が生産しているものを参考にします。やっぱり、手に取って使ってほしいので、人々にどんなニーズがあるのか、どんな形が使いやすいのかを探しながら作っています。

新しいものを作るときは、岩肌を見てしまいますね。ごつごつしている表面の凹凸とかを見て、人間には作り出せない自然の美しさからインスピレーションを得ています。

陶庫── 岩肌って、山とかに行かれるんですか?

本巣さん── 頻繁に行くわけではないのですが、栃木だと華厳の滝とか。滝ではなくて、周りの岩を見てしまいます(笑)。

「綺麗」だと感じるもの

陶庫── 綺麗だなと思うものはやはり自然でしょうか?

本巣さん── そうですね。やっぱり自然のものが綺麗だと思いますが、改めて言われるとすぐには浮かばないですね(笑)。

空とか?益子から帰るときに、田んぼと山に囲まれた景色に広がる空がすごく綺麗だなと思うんですよね。

あとは天の川とか、綺麗だなーと思うので、いつかカメラで綺麗に撮ってみたいです。まだまだ道のりは長いですかね(笑)。

益子の景色

世界の終わりに食べたいもの

陶庫── 世界が終わる時に食べたいものはなんでしょうか?

本巣さん── (即答で)米ですね。白米が食べたいです。

陶庫── 即答ですね(笑)。お米がお好きなんですね。

本巣さん── お米好きですね。納豆とか、食べるラー油みたいなご飯のお供とかおかずがあればなお嬉しいですけど、やっぱり白米が食べたいです。すごくこだわりがあるとかではないんですけど、基本は栃木のお米を食べています。

自分らしい表現とは

陶庫── 本巣さんが考える「自分らしい表現」ってなんですか?
本巣さん── 本巣さん── 形ですかね。作るときに形のラインを気にしながら作ります。特に削りの時に理想を追求して、その後の乾燥や焼きの工程で思った形から変わることもあるんですけど、それもまた面白いかなと。

陶庫── 確かに、本巣さんの作品は、色がモノトーンでシンプルな分、形が際立っていますね。お客様からも「形がいい」という声をよく聞きます。
本巣さん── 結構シャープなラインが多いかもしれません。曲線より直線というか。と言いつつ今回はゴツゴツしたものを作ろうとしているんですけどね(笑)。

陶庫── では、新しい本巣さんのスタイルが見れるということですね。
本巣さん── あとは考えずに、その時のフィーリングですね。粘土や泥で遊ぶような感覚です。

陶庫── なるほど。事前に設計して作るというより、やりながら変化していくんですね。
本巣さん── 新しい物を作るときはそうです。今イメージして作っても、全く違うものが出来上がることもあります。自分でも想像がつかないです。

陶庫── では今回も思いもよらない表現が生まれる可能性が高いということですね。楽しみにしています。

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